化学工場製造エンジニアのためのブログ

化学工場製造エンジニアの初学者のために、また製造エンジニアの体験談を中心に記事を書いています。

2019年07月

「製造プロセスの理解なんて当たり前だよ!」、「初日に説明されてすぐ理解したよ!」と言われるかも知れませんが、おそらくそれでは不十分です。この記事では配属1年目に学んでおきたい製造プロセスの範囲について挙げます。


1.プロセスフローの暗記
学ぶべき範囲
何よりまず最初にやらなければならないのはプロセスフローの暗記です。どの程度まで暗記するのかですが、塔、槽、熱交換器、ストレーナ、メインの配管、ポンプ、コントロールバルブをフローの最初から最後までを何も見ずに描けるようになってください。もちろん機器番号もです。

なぜ必要なのか
すべての基礎になることだからです。会話する際にいちいちフローを確認するような製造エンジニアはいません。運転員も常識的に知っていることです。また、保全、設計、研究所のエンジニアでも(歴が長い人は)知っていますし、(歴が短い)人と話すときは彼らが間違えていないように確認しながら進めるのも製造エンジニアの役割の1つです。


2.現場配置の暗記
学ぶべき範囲
1で覚えた設備が現場のどこにあるのかも確認してください。塔、槽、熱交換器、ストレーナ、メインの配管、ポンプ、コントロールバルブです。手動弁やユーティリティの配管などの細かいところは業務を通じて覚えた方が良いです。

なぜ必要なのか
1と同じです。

勉強方法
1、2を合わせてですが、何度もフローを描く、フローを描いたら現場で確認する。これにつきます。正直、配属すぐは(特に新入社員であれば)業務をしたい、業務を通して会社に貢献したいという気持ちが強いかもしれませんが、それをぐっと堪えて、1度だけではなく何度もフローを描いてください。どんなフローでどこに何があるか、丸暗記してください。これを暗記してからがスタートと言っても過言ではありません。


3.主要手順書の理解
1、2が終わったら運転員が使用する手順書を理解していきましょう。化学工場になれば手順書は100を超えることも珍しくありませんので、主要なものだけで構いません。細かいものはその都度読めばよいのです。

学ぶべき範囲
主要手順書といえば、スタートアップ、シャットダウン、緊急時の処置の手順書になります。すべて目を通すだけではなく、内容を理解しましょう。手順書を読みながらで構いませんので、(たとえばスタートアップの)タイムスケジュールを作成できるようになりましょう。

勉強方法
手順書を読むだけでは理解した気になって、本質を理解できていないことが多いです。そこでタイムスケジュールの作成を目標に手順書を読むことを進めます。そうすることでどの手順で作業が進むのか、どの作業が並行して行われているのか、この作業はどのくらいの時間がかかるのか、などの感覚を養うことができます。手順書だけでは時間間隔がわかり難いかと思いますので、過去の運転トレンドも参考にタイムスケジュールを作成してみると良いでしょう。そうして追っているうちに別の手順書も学習していく必要が出てくるのに気づくはずです。そちらも勉強していってください。※コンプレッサーや冷凍機の立ち上げ方など

なぜ製造エンジニアの学習が難しいのか
製造課に配属されて困ることは、なにより、エンジニアのための教育システムが不十分であるということです。
多くの企業でそうだと思いますが、大卒の社員は研究所に配属されることが多く、製造課配属が少ないため、初学者のための教育プログラムが十分でない場合が多いです。大手化学メーカーである私の会社でもそうでした。
また、業務を遂行するにあたって、前提の知識が必要な場合が多いため仕事を任せ難く、OJT、Off-JTどちらでも教育プログラムを組むのが難しいからです。

そのため、本人にとっては業務を遂行できるようになるために、自分で学習していかなければなりません。ところが、自分で学習しようにも製造エンジニアは業務範囲が非常に広いため何から手を付けてよいかわからず、またどの程度の知識が必要なのかがわからないため非常に難儀します。製造エンジニアのための教科書がないのもその要因の一つです。※正確には教科書はありますが、たくさんありすぎて初学者向けがどれかわからない。
そこで私の経験から、最初に学ぶべき項目、徐々に学んでいくべき項目を挙げさせて戴き、初学者のためのガイドラインのなればと思います。


製造エンジニアが最初に学ぶべきこと
最初に学ぶべきこと以下の2つです。
1.配属された工場のプロセス
2.製造エンジニアリングの基本技術
次の記事では具体的になぜそれを学ばなければならないのか、どのように学んだら良いのか、どの程度学んだら良いのかを紹介していけれたらと思います。

はじめまして。化学製造エンジニアの「くしの」と申します。
このブログは化学工場製造エンジニアのために、情報を発信できたらなと思って書き始めたブログです。
化学工場製造エンジニアのために役に立てたらと思いますのでよろしくお願いします。


経歴
2012年3月 某宮廷大学理学部化学科修了
2012年4月 化学メーカーに就職、製造課に配属
現在に至る...


資格
甲種危険物取扱者
エネルギー管理士(熱力学)
高圧ガス(甲種化学、第2種冷凍機械)
公害防止管理者(大気1種、水質1種)
第一種衛生管理者
酸素欠乏、有機溶剤、特定化学物質取扱作業主任者
QC2級
TOEIC 850点


私の職場
私が配属された製造課は化学工場の連続プラントになります。ナフサから得られる留分の一部を石油精製プラントから購入し、連続プロセスでモノマーを製造するプラントです。プラントの規模としては年間約10万tの製品を製造するプラントになります。


このブログを始めた経緯
某宮廷大学の大学院の理学部化学科を修了し、大手化学メーカーに就職しました。
大学では触媒の研究を行っていたので、同じく企業でも触媒研究をさせてくれるかと思いきやいきなり製造課に配属
製造課でがむしゃらに学んでいくうちに自分のキャリアが開けてきましたが、そもそも製造エンジニアのために教科書が少ないことから、これから製造エンジニアになられる方に向けて、一人前になるための教科書をになればと思いブログをはじめました。一人前の製造エンジニアになるために必要な知識から、第一線の製造エンジニアの情報を発信できたらと思います。

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